フジテレビ「めざまし8」橘美那さんに聞く「AD」のお仕事

アシスタントディレクター、通称ADと呼ばれるお仕事の業務内容は番組やジャンルによって多岐にわたります。
フジテレビの朝の情報番組「めざまし8」では、ADはTD(トレーニングディレクター)と呼ばれ、よりディレクターに近い業務を担っています。
ワイズの社員でチーフTDとして働く橘美那さんに具体的な業務内容、これまでの苦労や、やりがいを聞いてみました。

Q 橘さんが今のチーフTDというお仕事に着くまでの経緯を教えてください。

そもそも私は、学生の頃から毎朝情報番組を見ていて、実際に制作に携わりたいと考えたときにワイズの存在を知り、若い世代が多く活躍している会社の社風に惹かれて入社しました。
めざまし8に入った1年目は主に日々のニュースのVTRを扱う班を担当して、2年目はスタジオ演出がメインのフロアTDとして毎日のオンエアに携わりました。
そして3年目の今は、最初に担当したニュースを扱うVTR班にチーフTDとして戻り、今は後輩たちをまとめる立場に立っています。

Q 実際どのような業務を行っているのですか?

ざっくり勤務シフトをいうと自分が担当するオンエアが月に5〜6日くらいあって、TDはディレクターと同じように、実際に放送する企画を考えますし、会議でその企画を発表する機会もあります。

ディレクターのヘルプ業務としては放送する題材内容を調べるリサーチの他、ロケに行くディレクターの交通手段や宿泊の手配などもあって、放送日が近づくまでは割と地味な作業も多いんですよ。

でもオンエア前日から放送までは徹夜で放送準備、ここが一番大変ですね。
突発的なロケの準備やディレクターの編集サポート、テロップ入れの手伝いとか、生放送なので様々な作業が放送のギリギリ前まで続きます。
そして朝8時のオンエアが始まるとスタジオで演者に対してカンペを出したり、CMまでの尺出し、スタジオのセットチェンジを行うフロア業務をやるので緊張は続きますね。

オンエア後は片付けの他に、反省点をまとめる反省会の議事録まで書いて業務終了。
お昼くらいになるとようやく息抜きできるので仲間とご飯に行ったり、帰ってバタンです(笑)

Q TDスタート時に苦労したことを教えてください。

入った当初は本当に何も分からず、とにかくオンエア前日から放送までの徹夜に慣れることや、テレビ局ならではのシステムを覚えるのに必死でした。
中でも特に苦労したのはVTRで使う映像を集める、いわゆる「素材出し」という仕事です。

VTRを作る上では新しく撮影した映像を使う他に、テレビ局に保管されている膨大な量の過去映像を集める作業があります。
「社会」「経済」「スポーツ」など細かくジャンル分けされていますが、それを見るだけでも膨大な時間がかかる上に、使用する素材によってはいろいろな許可を得る必要があって、例えば別番組が撮ったものは別番組の責任者の許可が必要で、その許可をもらうための書類作りをしたり、実際に許可を得るために担当者に会いに行ったり…、
そういったテレビ局ならではの仕組みを覚えるのが最初の苦労でしたね。

Q 今の番組で「やり甲斐」を感じたことを教えてください。

めざまし8は、とにかく挑戦させてもらえる番組だと思ってます。新人でも番組の企画出しを行いますし、採用されたときはその企画をメインで担当することもできます。もちろんフォローとして先輩ディレクターがついてくれますが、そういった企画を最後までやり遂げられる達成感はとても大きいです。

最近では、新しいコーナーの立ち上げに関わることができました。担当ディレクターとコーナー名や企画案・ロゴを考え、ロケからVTRの台本作成・編集、テレビのオンエア後に配信で使用されるYouTube映像の編集まで行いました。ロケ準備からオンエアまではとても大変でしたが、その分やりがいも大きく、いろんな方からアドバイスをいただき、自分の成長を大きく感じることができた仕事でした。

他にも、フロアTDとしてスタジオ演出を担当していた時は出演者との関わりも多かったです。キャスターの谷原章介さんがW杯カタールからの中継を終え、日本に帰ったときにはW杯のお土産をもらえたり、私が髪型を変えると「みなちゃん髪変わったね」って、私の細かい身なりにも気づいて演者さんたちが声をかけてくれる楽しいスタジオでした。
大きな改編時には、卒業するアナウンサーから感謝の手紙をもらったこともあり、「挑戦」だけでなく、いろんな「人と関われる楽しさ」を感じられていることもやりがいに繋がっていると思います。

Q 担当する番組で何が求められるか教えてください。

 まずオンエア前は徹夜作業が絶対あるので、そこに耐えられる体力は必要ですし、情報番組なので、日頃からニュースを見て知っておくことも重要です。
それから、ひとつの班には、TDよりディレクターの方が人数は多く、頼まれる仕事量も多いです。そのため、素早く反応できるスピード感や正確さも大事です。

また、オンエアには多くの人が関わるので、コミュニケーション能力や「報連相」も必要です。ロケで何が撮れるのか、企画をどう進めるか、など先輩ディレクターに聞いたり報告したりしなければ進まないからです。
優しい人もいれば、クセが強い人や気難しい人もいる。そんなたくさんの人がいるグループで報告や相談をすることは、最初は慣れないかもしれませんが、必ず必要になるので普段からのコミュニケーションを取ることが大事になってきます。

Q たくさんの人がいる番組の中で「橘らしさ」をどのように発揮していますか?

 企画選びでは、自分がやりたいと思える企画を出すようにしています。自分で出した企画はほとんどの実務を自分が担当することになるので、この取材に行きたい、こういったことを伝えたいと明確に思える企画を選んでいます。例えば、私は生活に身近な新サービスや地域ならではの企画が好きなので、社会派の企画より生活情報系の企画を探す努力をしています。

あとはチーフTDとしての自分らしさでしょうか。
私は今TDをまとめる立場にいるので、後輩にミスがあればTD責任者の私に連絡が来ることが多いです。そのため、常にチーム内でアンテナを張って事実確認と状況把握するよう留意しています。何かあったときどういう状況で誰が作業したのかすぐ答えられるように、また、TDたちの作業量がひとりに偏ったり負担になりすぎていないか、とかをいつも意識して、「自分がどう動けばチームが問題なく円滑に回るか」を、私自身の視点で常に考えられるTDでありたいと思って行動しています。

Q 橘さんはワイズの会社内でリクルート活動のお手伝いもしているんですね?

 はい。ワイズでは採用活動の中で報道や情報番組に興味を持ってくれている応募者に、私の仕事内容や今までの経験談などを伝える仕事をしています。自分が就職活動をしているときに感じた不安や、実際に働いている人に聞きたかったことは何だっただろうと考えながら話すことによって、今の自分自身を振り返る良いきっかけにもなっていますね。

Q 今後の目標、展望を教えてください。

 まずは第一に早くディレクターに昇格したいですね。
それから、日々のニュース制作だけでなく、企画コーナーのVTR制作にも興味があります。

日々のニュース制作は時間との戦いなので、取材する人、編集を指示する人、編集ソフトを操作する人など、たくさんのスタッフが役割を細分化して短期集中作業でVTRを作りますが、企画のVTR制作は取材、編集はもちろん編集ソフトの操作に至るまで1人のディレクターが映像制作のあらゆる過程の作業を行うため、様々なスキルが身につきます。
そういうことも出来る様になって色んなVTRや演出が任せられるようなディレクターになりたいです。

また、もう少し広い視点での目標としては新しいコーナーを作ってみたいです。
私自身興味がある、生活に身近な企画のコーナーが今の「めざまし8」にはないので、そういった自分発信のコーナーを立ち上げてみたいという夢もあります。簡単なことではないですが、ディレクターになったら挑戦してみたいですね。

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